12日から14日まで、広島から始まり、神戸、大阪と地方視察に出ていました。
まず、初日の広島では、「共同労働について」市役所の担当課や委託運営をする事業者から話を聴きました。
そもそも協同労働とは、働く意欲のある人々が集い、みんなで出資して経営に参画し、人と地域に役立つ仕事に取り組む労働形態のことを指します。
広島市では、厚生労働省のこうした労働に係ってこられた方が市長になられたことから、他の自治体にさきがけての取り組みとなりました。
広島モデルと呼ばれる協同労働の取り組みでは、超高齢社会が進む中、就労や社会参加を希望する意欲と能力のある高齢者を社会資源と捉え、社会の支え手として高齢者の居場所と出番を創出することを目的としています。
また、この仕組みを活用して、地域課題の解決や地域コミュニティの再生へと繋げることで、多面的な効果にも期待できるとのこと。
市の係りとしては、起業を支援するために、NPOワーカーズコープへの業務委託を実施し、具体的な事業化の目途が立った団体を対象に、外部有識者による評価(事業可能性検討会議)等を行なった後、立ち上げに要する経費に対し、補助金(補助率1/2<上限100万円>)を交付します。
平成26年から、14団体が補助を受け、1つも解散などすることなく、現在も活動中とのことでした。
それぞれの団体の活動内容は、障害児者支援や地域サロン、災害復興、休耕田の活用など、幅広い事業が行われており、地域ごとにニーズと高齢者の活躍が程よくマッチングされています。
シルバー人材センターとの兼ね合いなどを質問すると「働き方に多様な価値観があり、自分にフィットする場を選んでもえる。そうした選択肢を増やしたかった。」とのお答えです。
「業務委託しているプラットフォームへの市の係り方について」「立ち上げの難しさや継続の困難についての検証と分析が必要であり、立ち上げ数の伸び悩み」が今後の課題とのことです。
また、業務委託しているワーカーズコープでは、「協同労働は、高齢者に特化したものではなく、今後は若者や起業希望者なども巻き込んだ、仕事づくりへと展開したい。市の考えがそこまであるのか。」など現場でのお話をお聴きしましたが、今後の展開に少々温度差があるようでした。
そして、お金も儲けが目的ではないというものの、活動の維持・拡張をするためにはもう少し財政的な余裕も必要とのことで、経営のあり方も考えていかなければならず、葛藤する部分もあるようです。
新宿区でも、細かな地域ニーズに応えるために、地域の元気とやる気のある高齢者の皆さんに一肌ぬいでもらう「広島モデル協同労働」は十分に参考になるものでした。
「広島モデル協同労働」の今後の展開やこれまでの検証・分析にも注視していきたいと思います。
13日は、朝から原爆ドーム、平和記念公園を訪れました。
平和記念公園では、原爆死没者慰霊碑に献花し、引き続き核廃絶と平和への希求を誓いました。
献花後、平和記念資料館に入りました。
言葉を失うような写真の数々、被害を受けた当時の物品や建物の一部などが展示されており、見て回るにつれ「戦争や原爆の悲惨さ」を十分に考えさせられ、「この世から核兵器を廃絶しなければならない」との意思を改めて強く持ちました。
公園も資料館も海外の方々が多く入館していました。
こちらでの見聞を、平和の大切さへの改めての気づきとしていただきたいと思います。
午後は、神戸市に場を移し、阪神・淡路大震災からの「防災への取り組みについて」、3つの所管からお話を聴かせてもらいました。
まず、「災害受援計画策定の取り組みについて」、伺いました。
ここでは、「受援シート」なる業務内容、情報処理、現場環境、必要とする資格、民間協力の有無など、事細かに記されたチェックシートを活用し、受援を混乱なく振り分ける仕組みの説明を受けました。
また、業務フローもしっかり作り込まれており、担当者が細かく援助者に説明する負担を軽くする用意です。
応援と受援は表裏一体であり、全国的に受援力の必要性を普及させることが課題であり、こうした仕組みが効率的に機能する受援計画の策定推進が必要とのことでした。
次に、「災害時の要援護者への支援に関する条例について」、お話を聴きました。
阪神・淡路大震災時では、要援護者の8割が近隣住民に救助されたとのデータを基に、要援護者の支援について、条例化がなされました。
地域住民による共助の重要性が謳われ、市の責務や要援護者。支援団体の役割が規定されました。
要援護者名簿策定にあたり、不同意の意思表示のない要援護者は同意したと推定する「みなし同意」や要援護者の個人情報を支援団体に手供する際の手続きなど、少々強引ともとれる手法に、救助・支援への本気の覚悟が感じられました。
また、要援護者に高齢者、障がい者、妊産婦、乳幼児のみならず、認知症の方や外国人なども入れていることに納得の説明を聴きました。
災害対策基本法に定められた事案のみで備えている新宿区は、見習わなければならない点も多くあるものと考えます。
続いて、「自主防災組織『防災福祉コミュニティ』について」、説明を受けました。
「防災福祉コミュニティ」は、「多数の火災、多数の被救助者が発生した場合、消防だけでは対応できない」との阪神・淡路大震災の教訓から、「自主防災組織は必要不可欠」との結論に至り、小学校単位で結成されました。
「何よりも命が大切。まずは安全確保と安否確認。」との説明には、惨事を知る者の言葉の重みがありました。
活動のマンネリ化や参加者の高齢化・固定化解消が今後の課題とのことでした。
これは、新宿区でも自主防災組織などにも言えることです。
子どもを巻き込んだ組織活性化の取り組みは参考になるものと思います。
全てのお話から感じ取れたものは、「現場は混乱する。そうした状況では、あれもこれもはできない。指揮命令系統や業務自体をいかに複雑化しないか。」ということでした。
また、「発災当初は役所のできることは限られる。」との、大災害の経験から語られる話は非常に説得力があり、それを見越した上での備えの必要を改めて学ぶ機会となりました。
3日目は、大阪で「天王寺公園における民間活力導入の取り組みについて」、現場を検分しました。
これまでの天王寺公園は、ホームレスの方が多く、市民にはあまり利用される場所ではなかったようです。
その上、管理費などで毎年3000万円の支出があり、財政的な負担からも改善が求められてきた施設とのこと。
そこで、「アベノハルカス」や「あべちかの再整備」で一気に府内の主要スポットになったことで、市はこの公園の全ての活用や管理を近鉄グループに委ね、年3000万円の使用料を徴収する方針に切り替えました。
公園は、芝生を基調にした作りに替え、「てんしば」と愛称がつけられ、様々なイベントが行われます。
また、有料の子育て施設や各種飲食店など商業施設も設置され、アベノハルカスと連動し、人の動線が大きく変わったとのこと。
管理・運営する近鉄グループも芝の管理など、経費の面では厳しいところもあり、公園の整備費を回収できるか微妙なところのようですが、最終的には連動するアベノハルカスの収益増につながることから、納得の商売のようです。
また、市としても、これまでと比べて差し引き6000万円の公園収益や隣接する市営の動物園や美術館の利用者増の効果に、市民の納得を十分に得られるとしていました。
新宿区も新宿中央公園の活用が検討されています。
今後、こうした手法も参考にする必要があるものと考えました。