本日は、10時から本会議が開かれました。
代表質問が行なわれ、私は昼前から3番手での出番となり、11時半過ぎたところでの登壇となりました。
手前みそではありますが、しっかりと区長や教育委員会にデジタル教育や子育て支援などについて、質せたものと思います。
質問の全文は以下に掲載します。
「教育現場でのデジタル活用について」
国の「GIGAスクール構想」が本格的に始まって3年目となりました。全国の小中学生の一人ひとりに情報端末が一台ずつ行き渡り、教育現場でのデジタル活用が進む中、子ども達がデジタル社会の善き担い手になることを目的とした「デジタル・シチズンシップ教育」が各地の学校で広がりをみせています。
「デジタル・シチズンシップ教育」は、欧米から端を発したもので、若者が効果的なデジタル社会の一員になるために必要な能力を身に付けることを目的とした教育です。新しいテクノロジーがもたらす機会を考慮し、情報に基づいた選択ができるようになることを目的として、学ぶテーマは、「メディアバランス」、「プライバシーとセキュリティー」、「オンラインでのトラブル」などの6つの領域が設定されています。私たちの生活において、コンピュータやインターネットは、もはや必需品であり、子どもたちの世代は生まれたときからデジタル環境に触れている「デジタル・ネイティブ世代」と呼ばれることもあります。
「デジタル・ネイティブ世代」を取り巻くICTを活用するデジタル環境においては、以前からトラブルの危険性が指摘されており、日本では「情報モラル」という独自の考え方が広く浸透しています。今や学校で「情報モラル教育」が行われることは珍しくありませんが、有識者からは「情報モラル教育が、○○するべからずの『べからず集』になっている」という指摘もあります。
GIGAスクール構想の推進やデジタル庁の設立をはじめ、今後もデジタル化が推進されることになりますが、デジタル化やICT活用には負の側面もあります。しかし、それを恐れるあまり抑制的になってしまっては元も子もなく、前進を望めません。負の側面をしっかりと認識しつつ、正しく活用するためには、どのようなことが求められているのか、どのように活用することが適正なのか、そうしたことを意識した上で、ポジティブな行動変容を目指す学びこそが、デジタル・シチズンシップ教育の本質とのことです。
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が発表した「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」には「次期学習指導要領の改訂の検討においても、デジタル・シチズンシップ教育を各教科等で推進することを重視」と記載されており、国としても重要と考えていることが分かります。こうしたことを踏まえて、教育ICT環境を管理する立場である学校や自治体などは、これまでの常識にとらわれず、未来の社会を見据えた考え方で適応していくことが求められることとなります。
大阪府吹田市では、「吹田市ICT教育グランドデザイン」にデジタル・シチズンシップ教育を取り入れ、「責任を持って積極的にICTを活用する」、「デジタル空間を公共の場と捉える」、「立ち止まって考える」を3本柱に2021年度より市内の全小・中学校で、これにちなんだ授業を行っています。授業では、「プライバシーとセキュリティー」など、6つの領域で示されている力を、義務教育9年間で身に付けていくプログラムとのことです。
新宿区では、配られているタブレット端末は、教育目的で一定の活用がなされているものと思われますが、「デジタル・ネイティブ世代」が効果的なデジタル社会の一員になるために必要な能力を身に付ける教育としては、少々物足りないのではと感じてしまいます。
そこで伺います。教育委員会としては「デジタル・シチズンシップ教育」をどのように捉えていて、何を実践していくべきか、どのように教育現場に落とし込みを図るつもりか、ご見解をお聞かせください。
また、スマートフォンやタブレットを毎日使う子ども達に、SNSなどに流れる情報を吟味し、正しい情報の受け取り方を身に着けて欲しいとの目的から、ゲーム仕立てでデジタルメディアリテラシーを学ぶ取り組みが教育現場で広がっています。
スマートニュースメディア研究所が開発した「擬似SNS」シミュレーション・ゲームでは、生徒たちは、ゲームの中で流れてくる虚偽情報を含む個々の投稿について、フェイクニュースかどうかを見分けながら、投稿をシェアするか否かを判断し、フォロワーを増やすことを目指します。
この「擬似SNS」シミュレーション・ゲームでは、
1. 同じ情報を見ても、人々の受け止め方は多様であることを体感する。
2. 自分が、その情報を他の人にシェアする際に、相手が自分と同じ受け止め方をするとは限らないことを意識し、シェアする前に、一歩立ち止まって考える。
3. 情報の真偽の判断は難しいことを認識する。ファクトチェックする方法について考えてもらうとともに、多角的な見方を学ぶ。
この3点を、このゲームで体感し、それぞれが学び、考えることが目的とのこと。このゲームを通して、日ごろの情報の受け取り方や発信の仕方について振り返りながら、情報をシェアする判断基準やデジタルメディアの特性について考えてもらい、こうしたことへのリテラシーを培うとするものです。
スマートニュースメディア研究所では、「間違った情報かどうか見分けるのは難しいと知った上で、情報とどう付き合うかを考えるきっかけにして欲しい」と意義が語られ、授業を担当した教諭からは「デジタルメディアをより実践的に学べた」との評価だったようです。
そこで伺います。こうしたデジタルメディアリテラシーを学ぶ取り組みを、教育委員会はどのようにお考えか、ご見解をお聞かせください。
「包括的な子育て支援について」
こども家庭庁が9月に発表した「令和4年度の児童相談所による児童虐待相談対応件数」は21万9,170件で、前年度より11,510件増え、過去最多を更新しました。年々増加傾向にある児童虐待を防止するため、国や自治体が一丸となり種々の対策が講じられてきましたが、虐待による重篤な死亡事例が後を絶たず、依然としてそうした環境にさらされている子ども、その保護者、家庭を取り巻く状況は厳しいものとなっています。
この発表と併せて、子育てを行っている母親のうち約6割が近所に「子どもを預かってくれる人はいない」といったように孤立した状況に置かれていることや、各種の地域子ども・子育て支援事業についても、支援を必要とする要支援児童等に十分に利用されておらず、子育て世帯の負担軽減等に対する効果が限定的なものとなっているとの説明がありました。
こうした子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化してきている状況を踏まえ、児童等に対する家庭及び養育環境の支援を強化し、子どもの権利擁護が図られた児童福祉施策をこれまで以上に推進するため、令和4年6月に児童福祉法が改正されました。この法改正により、要保護児童等への包括的かつ計画的な支援の実施の市町村業務への追加、市町村における児童福祉及び母子保健に関し包括的な支援を行うこども家庭センターの設置の努力義務化、子ども家庭福祉分野の認定資格創設、市区町村における子育て家庭への支援の充実等が、新たに盛り込まれたところです。
想定を超えるスピードで進む少子化への対策としても、子どもや子育て世帯を社会全体で支えていくことが重要であることは言うまでもありません。そうした中、子育てに苦労し、救いを見いだせずにただただ孤立し、行き詰まっていく方を早期に発見し、支援や救済へとつないでいくことが虐待などを減らしていく上で、喫緊の課題となっています。
そこで伺います。この法改正により、虐待、貧困、そして家族の世話や介護を日常的に担うヤングケアラーなど、様々な問題を抱え、生活が抜き差しならぬ状況に陥る子どもや家庭に対するサポートプランなど、計画的な支援が求められておりますが、区ではどのような対応がなされているのか、お聞かせください。
また、子育て世帯に対して包括的な支援を行なうこども家庭センターの設置に対しても、努力義務が課せられましたが、区ではどのように計画が進められているのか、お伺いします。
続いて、未就園児や無園児と呼ばれる子ども達への支援について、伺います。
共働きでないことから「保育の必要性」が認められず、保育園を定期的に利用できなかった家庭の子どもを預かる取り組みが各自治体で始まっています。保護者の就労や介護といった保育の必要性の認定が保育行政における利用の条件となっており、預け先のない保護者が育児の悩みを抱え、周囲から孤立するなど、未就園児や無園児と呼ばれる子ども達への支援が課題となっています。
こうした課題解決に国も動き出し、子ども家庭庁は2023年度に定員に空きのある保育園などで未就園児を定期的に預かるモデル事業「子ども誰でも通園制度」を実施し、文京区では30名の枠に179人が申し込む事態となり、利用前に必要な面談の予約が一時停止になるほどでした。担当者は、「日中、在宅で子育てしている人であっても利用できるものがあれば利用したかったということが分かりました。」と、想定を超えるニーズに驚いたとのことです。また、利用者からは「一時保育より定期的で長時間預けられるところが魅力」、「定期的に確実に預けられることが心の余裕になっている」との感想があったようです。
以前、他会派からの質問に「実施を検討したが適当な場所がなかった」とのお答えでした。これまで区の保育行政においてでは、待機児童の解消のため、多くのリソースが投入され、十分な効果があげられてきました。ただ、そうした施設のいくつかでは、その役割を終え、定員を減らしたり、学童クラブ等への転用を図るなど、社会状況に合わせた業態変化が起こっています。
そこで伺いますが、「こども誰でも通園制度」の実施について、再検討も含め、区はどのようにお考えか、ご見解をお聞かせください。
「高齢者の健康づくりや社会との交流促進について」
コンピューターゲームの腕前を競う「eスポーツ」を、高齢者の健康づくりや社会との交流促進に生かそうという動きが広がっており、リハビリ施設などで「eスポーツ」に力を入れる自治体があります。
沼津市にある通所型のリハビリテーション施設では2年前から、eスポーツ導入の取り組みをスタート。現在は週5日、1日2回、施設の利用者が、eスポーツを楽しめる時間を設けています。曲のリズムに合わせてアクションするゲームや体験型ゲームなどが用いられ、「手が思うように動かないし、目が付いていかず、難しかったが、面白かった。」、「頭を使う。認知症の予防になるかも。」と利用者からは概ね好評とのこと。担当する職員は「退職をされて、一線を離れて、だんだん家の中にこもってしまうようなことを解消していかなくてはならない。新しいものを高齢者の方に体験していただく、それが高齢者の社会参加、地域との交流の場というような形で、つながる1つのツールとして、eスポーツを使えればいいと考えている。」との狙いが語られ、こうした取り組みによって、高齢者の方たちが地域の通いの場に、参加するきっかけとなればと期待しているようです。
また、地域の子どもと一緒に、eスポーツを交流して体験したいという要望もあり、eスポーツの出前体験会において、多世代間交流につなげる取り組みをしたところ、老若男女問わずに好評で、今後はこのようなかたちで地域活性化も図っていきたいとのこと。こうした取り組みに参加した高齢者からは「孫とのコミュニケーションが新たにできるようになった」との感想もあったようです。
高齢者向けのレクリエーション人材の育成などを手がける日本アクティビティ協会によると、認知機能低下の防止などを狙ってeスポーツを取り入れる高齢者施設は増加。その数は協会が把握するだけで200以上となり、自治体が介護予防の一環として、高齢者向けの体験会を開くことも増えているとのこと。
「集まってゲームをすることで、ゲームをしている人だけでなく、周りで見ている人も、発話やコミュニケーションが増える。」との波及効果が認められる中、eスポーツの効果を科学的に検証する研究も進んでいます。慶応大学環境情報学部の加藤貴昭教授らは19年、10週間にわたり週1回(約2時間)、「太鼓の達人」をプレーした平均79歳の21人を調査。体験者の眼球の動きはゲームの先の動きを読むように変化し、認知機能を示す値も向上していたとのこと。加藤教授は「eスポーツをすることは介護予防につながる可能性がある。」と、眼球の動きや認知機能が改善したことをうかがわせる報告をしており、今後更に注目を集めるものと考えます。
そこで伺います。区としては、高齢者の健康づくりや社会との交流促進にeスポーツを採り入れる取り組みについて、どのようにお考えか、ご見解をお聞かせください。
「加齢性難聴について」
加齢による聴力の低下は、高音域から始まり、徐々に低音域に聞こえの悪さを感じる人が増えると言われています。つまり、高齢になると、高い周波数の音、電話の呼び出し音や、時報の音など、一般的な日常会話においては、250Hzから4000Hzくらいの幅がありますが、高音域の言葉が聞き取りにくくなります。早くは40歳代から始まり、50歳代と低下、60歳代になると、軽度難聴レベルまで低下する音域が増えると言われています。
最初に、本区内の加齢性難聴の実態把握と調査について伺います。70歳以上の高齢者のおよそ半数は加齢性難聴と推定されることから推計いたしますと、令和5年11月1日現在、新宿区の65歳以上の人口は66886人であることから、少なくとも数万人単位で難聴者がいると考えられますが、区はその実態をどのようにつかんでいるのか、また、どのような調査がなされているのか、ご教示ください。
次に、認知症との関係について伺います。加齢性難聴は、日常的な会話を困難にするため、他者とのコミュニケーションの機会が減ることによる脳機能の低下など、認知症発症のリスクが高まることが指摘されています。本人あるいは家族など周囲の方が早期に気づき、適切な対応につなげるためにも、加齢性難聴に関する必要な認識を持つよう、啓発を図るなどの対策が必要と考えますがお考えをお聞かせください。
続いて、早期発見と早期受診について伺います。加齢性難聴においては自覚していない高齢者は多く、難聴が疑われたら耳鼻咽喉科への受診を勧奨し、適切な補聴器利用につなげることが重度化を防ぐためにも重要であり、早期発見と早期受診の仕組みが肝要であることは明白です。難聴に早期に気づくために、高齢者への健康診断項目に聴力検査をいれることや聴力検査の必要性の周知を徹底するなど、更に対策を講じる必要があるものと考えますが、区のご見解を伺います。
最後に補聴器について伺います。日本老年医学会雑誌に掲載された調査では、65歳以上の難聴高齢者数は全国で、約1655万3千人と推定されます。一方で日本補聴器工業会の調査では、2022年の難聴を感じている人の補聴器所有率は15.2%であり、前回、調査のあった、2018年の14.4%から若干増加したものの、依然として低い状況です。本区における加齢性難聴や補聴器使用の傾向について、お答えください。
補聴器は保険適用にならないため全額自己負担で、片耳で8万円台から40万円と高額です。本区では補聴器の現物支給を行っていますが、現物支給に加え、補聴器購入に対しての助成をして欲しいとの声も高齢者の方から多数聞かれます。
23区では、港区では補聴器購入の助成対象を60歳以上とし、所得制限はなく、助成額は住民税非課税の方は上限13万7000円、課税の方は上限6万8500円となっています。また、江東区は、現物給付と並行して現金補助の制度が新たに実施され、こちらでは所得基準額の縛りはありますが、65歳以上の在宅の方を対象に、30000円を上限に補聴器本体の購入費が助成されます。本区においても現金の補助を検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。ご見解を伺います。
また、補聴器につきましては,精密な医療機器であり、使用者それぞれの聴力に合わせて何度も調整を行う必要があり、最も重要なのは装着前のトレーニングだと言われています。人間の耳は、脳が行っている処理によって、不要と感じる音を排除したり、逆に意識して聞いたり、フィルターをかけることができますが、加齢性難聴はこの機能が衰えているので、補聴器を装着すると、いっぺんに音が入ってきてうるさく感じてしまうのです。そのため、実際に補聴器を使い微調節を加えながら、本来の聞こえ方に脳を慣らしていくトレーニングが、最低でも3カ月間は必要と言われています。高齢者総合相談センターで相談を受けたり、受託事業者でアフターケアがなされておりますが、「トレーニングを行う講習会」などの取り組みも必要と考えますがいかがでしょうか。区のご所見をお聞かせください。