9/17の総括での質問を全文掲載します。
= 総括 =
<シチズンシップ教育>
まず、選挙年齢18歳引き下げにあたり、いくつかお聞きします。
自立した市民を育てる「シチズンシップ教育」が日本でも広がり始めたとの新聞記事を読みました。「シチズンシップ教育」とは、自ら社会をつくる意識や国家や社会に対して正しい批判の目を向けられる素養や判断力を培う教育であり、ヨーロッパで盛んに行われています。若者の社会への無関心などがきっかけで、社会の一員であることを自覚させ、積極的な参画を促すことが大きな目的として始まりました。
このような流れのなかで、英国では、中等教育にシチズンシップ教育を導入しています。この教育カリキュラムの導入に向けた諮問委員会の答申書では、「我々は国家全体でも地域でも、本国の政治文化を何より変えることをねらいとしている。つまりそれは、公共生活に影響を与える意思、能力、素養をもった能動的な市民として、人々が自身について考えられるようにすることである。」と述べられ、社会に積極的に参加し、責任と良識ある市民を育てるための教育をうたっています。
日本の公民教育では、政治や経済の仕組みを学習するに止まるのに対して、英国の市民教育は、そのシステムに参加するスキル、考え方、コミュニケーションについても学習します。
たとえば、社会の問題を解決するために、どこから情報を仕入れ判断し、どのような手段(政治・ボランティアなど)を用いるのか、どのようにして他者と合意形成を行うのか、どのようにして相手を説得するのか、といったより実際的な社会参加・政治参加を学習するのです。
扱う事柄は、ゴミ問題など身近なものから政治まで幅広く取り扱います。これまで日本では、政治的な論点を扱うことや社会批判を増長する恐れなどから、こうした教育に及び腰だったとのこと。異なる利害がぶつかる中で、妥協点を見出していくことが民主主義である以上、こうしたコミュニティに関わる教育は必要だと考えます。
市民の正しい批判や厳しいチェックの目は、政治家を鍛え、正しい社会形成には不可欠なのは言うまでもありません。こうした教育に対して、政治職である区長はどのようにお考えですか。
また、教育として、形や仕組みだけではなく、一歩踏み込んだ取り組みについて、教育長のお考えをお聞かせください。
また、18歳から投票権が与えられるということになり、投票率向上についても新たな取り組みが必要だと考えますが、選挙管理委員会として検討していることがあればお聞かせください。
「若者の判断力は万全ではない」と彼ら自身は考えていると新聞のアンケートなどの回答から読み取れます。この不安を解消するには、政策や候補者を見極める力、読み解く力、いわゆる「選挙リテラシー」が不可欠です。
選挙は何のためにあるのか、自分の要望や目指す社会を実現するためには、誰に投票すべきか、こうしたことを自己消化していく能力を身につけなければなりません。
また、これは選挙のみに発揮される能力ではなく、今の社会に必要な政策は何か、税金が使われるべき優先順位など、社会の一員として一層自覚していく、または社会参画へつながるものだと考えます。
山口県では、学生が自主的に安保法案について授業で扱ったら、議会からプレッシャーがかかったと聞きます。ただでさえ政治に踏み込むことに及び腰だった教育行政では、「そらみたことか」となったようですが、学生、学校の自主的な学びに、議会がプレッシャーをかけるなど言語道断であり、新宿区ではそうした時代錯誤な方はいないものと思います。自信を持って、こうしたシチズンシップ教育などを採り入れてもらうよう要望します。
これまで20歳から投票ということであれば、成人式(成人の集い)などで啓発するやり方もあったと思いますが、投票年齢18歳に引き下げということになるとどういうタイミング、もしくはイベント等での啓発になるのか、お聞かせください。
<介護>
次に、介護にまつわる諸々についてお聞きします。
介護される人と介護する人がともに65歳以上という「老老介護」が急増しています。国民生活基礎調査によれば、同居家族が介護を担う世帯で、老老介護の割合が半分以上になりました。介護される人とする人の双方が75歳以上という世帯の比率も高く、全国的な動向だと、10年後には、夫婦二人暮らしで65歳以上の世帯が1.2倍、75歳以上の世帯が1.6倍になる計算です。
国は、在宅介護を進めているので、老老介護が増えていくことは避けられません。そうなると介護する側への支援を充実させることが急務です。介護保険があるのに利用していないケースや「どんなサービスがあるのか」「どう手続きすればよいか」など、制度が周知されていない状況が問題として取り上げられています。
行政は、介護保険でできることをしっかり伝達し、支援に結び付ける努力をしなければなりません。また、介護する人が全てを自分で抱え込むとストレスがたまり、将来への不安を募らせるとのデータが出ています。虐待や殺人に至る不幸なケースもあり、背景にある孤立が最も大きな理由とのこと。
見守りが必要になりそうな高齢者を訪問する仕組みなど、民生委員のみならず「介護コーディネーター」や「配食サービス業者」などと連携し、対策を強める必要があると考えます。団塊の世代が高齢化する前に、老いへの不安を解消する取り組みが喫緊の課題です。
「介護コーディネーター」などの育成や設置、地域での支え合い強化、民間事業者への協力・連携体制の取り組みなど、区のお考えをお聞かせください。
イギリスには、無償の介護者(日本では概ね家族や親族)の権利を守り、支援する法律の整備が進んでいます。
病気や障がいがある家族を介護する人には、財政的のみならず、精神的なものなど、様々な負担が伴うのは言うまでもありません。イギリスでは、こうした介護者の相談にのり、公的サービスにつなげるなど支援を行っています。
介護者が未成年の場合は、学業支援なども含まれます。支援の必要性の評価は、自治体の職員などが介護者と面談し、「どのような介護を、どれだけの時間しているか」「健康や仕事への影響はないか」など丁寧に聴き取り、家事援助や息抜き休暇費用など支援の必要性を認定します。
日本では、「ショートステイ」で要介護者を短期間施設などに入れることで、介護者の息抜き時間を担保すると言っていますが、介護者に対する支援は限定的で、直接対象にした給付はありません。
介護により、健康を損ねたり、学業や仕事が犠牲になることは社会の著しい損失を与えます。今後も、介護が大きな負担になり「共倒れ」や「離職」の増加が予想される中、介護をしながら自分の人生をしっかり送れるような支援や方策を整えることが必要だと考えます。
区としての取り組みやお考えをお聞かせください。